OLD SCHOOL「宇治の洋菓子マロン」

駅前のケーキ屋さんで、130円の口福をどうぞおひとつ

写真:馬場健太 文:高橋マキ

JR宇治駅を降りて、商店街へ向かおうとロータリーをぐるっとまわると、信号がある。この信号が赤ならあなたはラッキー、青なら残念、アンラッキー。 なぜなら、信号待ちをしているときでないと、通りの向こう、角から少し左手にあるこの「洋菓子マロン」に気づかないから。 66-IMG_6819 わたしのような昭和レトロ好きなら、どんなに遠目でも、まずこの金のロゴに萌える。そして信号が青に変わったら、予定をちょっと後回しにしてでも、もう迷わずこの自動ドアをくぐらずにいられない。 31-IMG_6694 昭和43年の開業以来、このまちで日常的に親しまれる「ケーキ屋さん」。当代の松阪剛さんは2代目だ。「京都の都ホテル(現・ウェスティン都ホテル)で修業した父がオープンしました」。ショウケースには、その証とでもいうべき気品あるアップルパイが、誇らしげに鎮座する。 「母方の実家でもある青森からりんごを取り寄せて、むかしながらのレシピで手作りしています」。40年以上の歴史を刻むその姿の、なんと愛おしく美しいこと。 48-IMG_6760 「私も27歳で父のもとについたのですが、その後すぐに倒れて亡くなってしまったので、一緒に働けたのは2〜3年のことでした」。 父からの最大の教えは「できるだけ新鮮なものを」。そのために、手間を惜しまず、少しずつこまめにつくること。 33-IMG_6698 ちびっこからお年寄りまで、はたまた最近では外国人観光客にも幅広く愛されているのがこのシュークリーム。剛さんがお客様の声にていねいに耳を傾けることで、いまのカタチが生まれた。シュー皮が、丸ではなくどちらかといえばエクレアに近いのは「そのほうが食べやすいから」。その場でクリームを詰めるなら、「皮はできるだけ薄くてサクサクした食感がいい」。すべては、お客さんのために。ただただ、美味しいお菓子を届けたい。 「おひとつ、つくりましょうか」 52-IMG_676956-IMG_678157-IMG_6788-214-IMG_6638-2 カスタード入り「シュークリーム」と、カスタードベースのクリームに抹茶を加えた「抹茶シュークリーム」の2種類。どちらも、おひとつ130円(税込)。 ポンと手渡されたそれを、2秒後に頬ばる。歯をたてたかと思う刹那にサクッとはかなく崩れるシュー皮と、程よいバランスの量のクリームが口を満たす。「カスタードと抹茶、どっちにしようかな〜」なんて迷いは無用。軽々と2個、瞬時に胃袋に収まる軽さとおいしさ。むしろあとふたつ、いけそうだ。 ふとふりかえると、白髪の紳士が店の片隅のイートインコーナーで、一服していた。お皿にはケーキが2個。トレイには、コーヒーでも水でもなく、煎茶のグラス。 「宇治やさかい、ねえ」 剛さんのお母さんが、笑ってそう言いながら、おかわりのお茶を注ぐ。午後のひととき、なじみのお客さんとのほのぼのとしたひとコマ。 43-IMG_6747 商店街にたくさん誕生しているホットなスイーツショップももちろん気になるけれど、肩の力の抜けたこの「マロン」のオールドスクールな魅力には、新参者ではなかなか敵いそうにない。 あなたがこんど宇治に来るときは、どうか駅前の信号が赤でありますように。     62-IMG_6812 〈洋菓子マロン〉 住所:宇治市宇治宇文字17-15(JR宇治駅前 / 地図 電話:0774-22-6366 営業時間:9:30〜17:30 定休日:水曜日 クレジットカード不可、喫煙可

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