矢田寺



冬至のかぼちゃ供養で無病息災 

―文:大木由美、写真:岡タカシ

地元の人や観光客で賑わう寺町京極商店街、その一角にある小さなお寺が「矢田寺」です。門をくぐると商店街の喧騒がすっと引いて、静かな境内が現れます。境内にはたくさんの赤い提灯が飾られ、正面に「代受苦(だいじゅく)地蔵」「送り鐘」の文字、それから釣鐘が見えます。


矢田寺1

矢田寺2

矢田寺3

矢田寺の歴史は古く、平安時代の初め、今の奈良県にある矢田寺の別院として五条坊門(下京区)に創建され、以後、戦火などで寺地を転々とし、天正七年(1579)に現在の地に移されました。本尊の地蔵菩薩は代受苦地蔵と呼ばれ、本堂の中に安置されている像は燃え盛る炎の中にいらっしゃるような姿です。

これは、矢田寺の住職だった満慶(まんけい。または、満米(まんまい))上人が地獄で見た、炎が煮えたぎる鉄釜の中にいる罪人を助けていた地蔵尊の姿を彫らせたもの。今も、地獄で亡者を救う地蔵として人々の信仰を集めています。

また、矢田寺の梵鐘は「送り鐘」と呼ばれ、死者の霊を迷わず冥土へ送るために撞く鐘として、精霊送りの時期にはたくさんの参拝者が鐘を撞くために訪れます。

矢田寺4

矢田寺5

住職夫婦が手づくりした「ぬいぐるみ地蔵」も、特に若い女性に人気です。手づくりならではの、ひとつひとつ顔の違う地蔵守りはとても愛らしい姿。お守りの中には小さな代受苦地蔵のお札が入り、良縁成就・安産祈願・無病息災などのご利益があるとされています。お守りは持ちかえって大切に保管しても、願い事を書いて奉納してもよく、境内には絵馬と共に奉納されたぬいぐるみ地蔵がたくさん吊るされています。

矢田寺6

そんな地元に密着した矢田寺で、20年ほど前から行われているのが冬至のかぼちゃ供養。寒さが厳しくなる12月23日、境内には大人の両腕で抱えるほど大きなかぼちゃが奉納されます。この大かぼちゃ、なでると無病息災のご利益があるとか。

また、昔から中風(脳卒中)や風邪の予防に、または金運を祈願するために食べられていた、かぼちゃを炊いたものが参拝者に振る舞われます。やわらかく甘く炊かれたかぼちゃは、慌しい師走に少しでも一息ついてもらいたいというご住職の願いが伝わってくる、優しいお味です。

近年は、このかぼちゃ供養の様子がテレビなどで取り上げられたことから参拝者も増えて、かぼちゃ供養当日は開始時間の9時前にはもう行列ができるほどの人気です。限定1,000食なので、どうしてもかぼちゃが食べたい方は早朝から並ぶ覚悟で。

〈矢田寺〉

住所:京都市中京区寺町通三条上る523(地図

電話:075-241-3608

参拝時間:8:00~19:00

★長友麻希子さんによるTRAVEL IDEA「京の冬の食を旅する」、次にご紹介するSPOTは「上賀茂神社」です。

LINEで送る