亀屋良長



冬の和菓子のはなし

―文:長友麻希子

四季折々に私たちを魅了する美しい和菓子。新年はちょっと特別な和菓子が揃います。いったいどんな素敵なお菓子に出会えるのでしょうか。京菓子の伝統を大切に受け継ぐ老舗「亀屋良長」を訪れました。

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享保2(1803)年に創業して以来、200年以上この場所で和菓子を作り続ける亀屋良長。最近では、和菓子の可能性を追求する新ブランド「Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA」も人気で、まさに老舗ならではの伝統と革新の精神が生きています。ちなみに、お店はこの秋にリニューアルしたばかりです。

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お店の入り口では、京の銘水として知られる「醒ヶ井水」がこんこんと湧き出ています。この水こそ、まさに亀屋良長が代々受け継ぐ宝物。おいしい餅をこしらえ、餡を風味よく炊き上げるには何よりも良質な水をたくさん使います。質の良い水は、おいしい和菓子作りに欠かせない大切な素材でもあるのです。初代が堀川四条に近いこの地に店を構えたのも、この水を求めたからだそう。京都の茶の湯を生業とする家々が小川通から始まる同じ水脈上に点在するように、和菓子店にとっても水はかけがえのない命そのものなのです。

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店先のショーケースに美しい和菓子がずらりと並ぶのが現在の和菓子店ですが、かつてはその場ですぐに購入するのではなく、オートクチュールのように目的に合わせて注文するのが伝統的なスタイルでした。 

新年を祝う和菓子も師走のうちに選ぶのが習わし。京都では12月13日の事始めが終わると、いわゆる『まわり』がスタートします。美しい菓子見本を持って得意先をまわり、注文を聞くのだそうです。亀屋良長では、今もその伝統を受け継いでいます。

亀屋良長5さて、京都で新年を祝う菓子といえば、まず「花びら餅」でしょう。いまや全国区となって知られるようになりましたが、元祖は明治期に裏千家の茶の湯の菓子として考案されました。宮中の食文化をルーツにもつためか、真っ白な半月形の姿は、どことなく上品で清らかな美をたたえています。お餅の中は、京都の冬ならではの白味噌をたっぷりと使った餡とゴボウが入っています。まさに京都のお雑煮のような素材の組み合わせです。まさしく初春限定の味なので、ぜひ、味わってみたいものです。

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新年のお菓子には、花びら餅のほか、干支や松をデザインしたものなど、晴れやかな空気をまとったお菓子が揃うほか、最近ではニーズが減っていますが、「お題菓子」もあります。

お題菓子というのは、新年に皇居で行われる歌会始の「お題」にちなんだ菓子のことです。平成29年歌会始のお題は「野」。一つのお題からイメージを膨らませて詠む和歌のように、和菓子もまた意匠と銘(菓子の名前)という組み合わせでお題の世界観を表現します。

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「和菓子は焼き印一つで味が変わる」と言われるように、意匠と銘の組み合わせがとても大切です。旬のフルーツで季節感を出す洋菓子とは異なり、和菓子の場合は四季を通じて素材にはそれほど変化はありません。意匠と銘で季節やテーマを緻密に表現する技が磨かれたのは、そういう素材との関りもあるのでしょう。同じ上用饅頭でも、焼き印の柄が変わったら、まるで味まで変化するような感覚を覚えるのは、まさに和菓子マジックともいえる和菓子の魅力です。

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和菓子がどんなふうに作られているのか、気になりませんか?亀屋良長の職人さんが教えてくれる手作り教室で体験してみましょう。今回は、現在の当主、8代目・吉村良和(よしかず)さんに教えていただきました。

教室の所要時間は約70分。作るのは、練り切りを使った季節の和菓子2個ときんとん1個。一通りの説明を受けた後、ヘラの使い方や、きんとんの盛り方等、京菓子特有の繊細な技法や意匠を学びながら仕上げていきます。干菓子のデモンストレーションもついていて、丁寧に作り方を教えてくれます。

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おいしい材料を用意する手間と熱意、感性が問われる意匠、そしてお菓子により深みを与えてくれる銘。そのすべてを知ることで、ようやく和菓子の奥深い魅力に触れることができるのです。

 

冬の和菓子は素材のおいしさも魅力です。秋に収穫された新米から作る米粉類をはじめ、和三盆、寒天、いろんな素材が冬をピークに生産されます。上用饅頭を膨らませるのに使う、つくね芋も冬が旬です。

新年こそ、和菓子の極み「京菓子」のおいしさを味わってみてはいかがでしょう。

〈亀屋良長〉

住所:京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19(地図

営業時間:9:00~18:00 休み:年中無休(1/1,2を除く)

TEL:075-221-2005

FAX:075-223-1125

WEBサイト:http://kameya-yoshinaga.com/

★長友麻希子さんによるTRAVEL IDEA「京の冬の食を旅する」、次にご紹介するSPOTは「錦市場」です。

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