てんこく屋空空

書で相手に時間を届ける

―文:佐藤和佳子、写真:岡タカシ

高台寺の目の前、圓徳院の境内に立つ・洛市「ねね」の一角に立つのが、400年以上続く老舗店の筆や墨など本格な書道具をベースに和紙の便箋やぽち袋など「かく(書、描)楽しみ」を提案するセレクトショップです。

こちらのおすすめは、なんといっても店主の中川古啓さんが一つ一つ自分用に彫ってくださる篆刻です。篆刻とは紀元前に使われていた書体篆書を石に彫った印のこと。現在の漢字の元となっている書体です。書道作品や日本画、著名人の手紙などに押されているのを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

こちらで自分専用の篆刻を作ってもらうことができるのです。彫ってもらうのは名前が多いですが、座右の銘などでもいいのだとか。でも文字を彫ってもらうからには、文字の意味や成り立ちも知りたいもの。中川さんは文字に関する造詣が深く、文字の成り立ちや中国から日本に入って平仮名や片仮名ができていく変遷などの話が面白いのです。「例えば、この形、何に見えます? これは右手。右手が重なるということは、誰かと誰かの右手ということですよね。つまり、手に手をとって助け合うこと、これは友という字になるんですよ」。そんな風に漢字の意味を大切にしたり、デザイン的な配置を考えたりと、一緒に相談しながら篆刻のデザインを決めてくれます。

そういえば御朱印にもお寺の印が押されています。中川さんに近年の御朱印人気について伺ってみると、「よくお守りやお札って色々な寺社のものを頂くのは良くないと聞くので、お寺の方に伺ったんです。そうしたら、このお寺は健康に対するご利益、こちらは恋愛と、いろいろなご利益を分けてもらうわけなのだからいいと。そうすると朱印帳は自分だけのパワーアイテムを作っていることになるんですね。スタンプラリーになってしまってはいけないですが、朱印帳は自分用のパワーアイテムを集めていることになるんですよ」。なるほど、御朱印帳がパワーアイテムいうのは素敵な発想です。

「篆刻はアートであるけれど、古く見せるためにわざと欠けさせるとか、作意を入れてはいけないと思うんです。私は彫り始めてから彫り終わりまで、時間を表現したいなと思っています」。朱印も相手を思ってお寺の方が一文字ずつ書き、印を押してくださいます。その流れは時間を頂戴していますし、手紙もそうかもしれません。手書きをするとウキウキした心やありがとうという感謝の気持ちが文字から伝わりますし、最初と最後では気持ちに変化があって、字が変わっていることもあります。これも時間を届けているのかもしれません。

お話を聞いていたら、相手を思いながらゆっくりと、誰かに手紙をしたためたくなってきました。そして、最後に自分の篆刻を押すことができたら、素敵な手紙になりそうです。

 

てんこく屋空空(くうくう)

住所:京都市東山区高台寺下河原町530 京・洛市ねね1階

TEL:075-533-1980

営業時間:12:00~17:00

定休日:木曜日

WEBサイト:http://homepage3.nifty.com/tenkokuya-kuku/

【篆刻オーダー】

3分角(9mm)一字篆刻 3,240円~ 

※サイズなどにより価格変動。ただいま人気のため3か月待ち。

 

★くにとみるみこさんによるTRAVEL IDEA「御朱印と書、文字の魅力をめぐる一日」、次にご紹介するSPOTは「小嶋商店」です。

LINEで送る