風俗博物館

源氏物語と平安ファッションにふれあうニッチな博物館

―文:大河内ゆかり、写真:岡タカシ

 

西本願寺にほど近いビルの5階にある小さな博物館。源氏物語のシーンを1/4の縮尺で展示するジオラマ空間は、平安時代の雅を感じられる場所です。博物館を運営するのは三百年以上の歴史を誇る井筒法衣店。神祇・仏式装束を扱う老舗企業です。日本の風俗・服飾の研究者だった先代が、伝統的な装束や調度品が生活の中でどのように使われていたかを示すために具現化展示を行っています。

展示のメインは源氏物語で光源氏の邸宅となっている六条院の模型。今回の展示では紫の上による法華経千部供養「御法」のシーンを、六条院を二条院に想定して展示されていました。といっても知らない人にはピンとこないかもしれませんが、源氏物語ファンにとってはお馴染み。親王・上達部が参列した盛大な法会の模様が華やかに表現されています。

人形の頭(かしら)は、伝統工芸である京陶人形の作家・磯垣とも子さんが制作。ふっくらとして愛らしい面立ちは見ているだけでも心が和みます。六条院の緻密な再現はもちろん、毎回シーンに合わせて一から織り上げるという衣装の数々も見どころのひとつ。パンプレットには衣装の解説も詳しく記されているので、平安時代のリアル・ファッションも垣間見られます(英語の翻訳も有)。

寝殿造りの六条院、東の対では毎回平安の年中行事を展示。また平安時代の遊びや局・女房の日常なども紹介されていて、こちらは一般の人でもとっつきやすい展示となっています。例えば平安時代の美人について紹介するコーナーでは、容姿の中で最も重要な黒髪をピックアップ。金壺眼(くぼんで丸い目)、天狗鼻、縮れ毛は醜女の条件だったそうで、「男衾三郎絵詞」という鎌倉時代の絵巻物と共に紹介されています。今なら異国風美人だったであろう美意識のギャップも興味深いですが、現代と同様にルックスを気遣う女性たちの姿には親しみも覚えてしまいます。

 

風俗博物館は、マニアックなミュージアムです。博物館側も団体さんはお断り。興味がある人に本格的な展示をゆっくりとご覧頂きたいというスタンスなので来館者はリピーターが多く、ファンは半年に1度の展示替えを楽しみに待っているそうです。しかしこのニッチ感が京都らしく、老舗法衣店の伝統を礎にした本格的な展示もとても説得力があります。源氏物語のみならず平安ファッションという視点から眺めると、初めて訪れる方でも身近に感じられ、新鮮な面白味を味わえるかもしれません。

 

風俗博物館

住所:京都市下京区堀川通新花屋町下る井筒左女牛ビル5階(地図

TEL:075-342-5345

時間:10:00~17:00

休館日:日曜・祝日・お盆(8月13日~17日)・展示替期間(6月1日~7月31日、12月1日~2月3日)

入館料:一般500円・中学生/高校生/大学生300円・小学生200円 

WEBサイト:http://www.iz2.or.jp/

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