清凉寺と豆腐

滑らかなコシが魅力の豆腐

―文:佐藤和佳子、写真:マツダナオキ

 

嵐山の名所・渡月橋から真っすぐ北へ。道の突き当りに立つのが「嵯峨の釈迦堂」の名で愛されている清凉寺です。創建は寛和3(987)年。中国から帰国した奝然(ちょうねん)が建立を計画し、没後、弟子の盛算により師が請来した釈迦如来立像を清凉寺の前身である棲霞寺に安置したのが始まり。この釈迦如来は非常に珍しく、体内に布製の胃や心臓などの納入物があることから「生身如来」とも言われています。

お寺に到着したら、まずは立派な仁王門へ。こちらは江戸時代に再建された和様と禅宗様を折衷した門で、初層には赤い阿形吽形一対の金剛力士像がたたずんでいます。

大方丈の前庭は石を配した枯山水庭園で、安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した茶人・小堀遠州作と伝わるもの。新緑の頃もいいですが、秋は紅葉が見事。縁に座ってゆっくり眺めるのもおすすめです。

清凉寺の門前、すぐ東隣に立つのが「嵯峨豆腐」の名で知られる豆腐店の森嘉。京都で豆腐店といえば必ず名が上がり、料理店で森嘉の豆腐を使っていると言えば味の信用も増すという名店。工場兼店舗である店先には行列ができることも多く、お昼には売り切れになることもあるそうです。

そんな森嘉の創業は安政年間(1854~64)。現在は5代目と6代目が中心となって豆腐作りを行っています。森嘉の豆腐は、絹ごしと木綿のちょうど中間のような柔らかさと滑らかなコシが魅力。というのも戦時中、にがりが手に入らず、代わりにすまし粉を使用したところ「このように、つるっと滑らかな豆腐になったそうです」と6代目の森井邦夫さん。

ですが「当初は、あまりの柔かさから“箸にもかからん森嘉”と揶揄されたと聞いています」。それが撮影所に来ていた映画関係者の口コミで評判が広がり、川端康成が小説『古都』の中で登場したり、吉井勇が“うつし世の淡々とせし味はひは嵯峨の豆腐にしくものぞなき”と詠んだりしたことから大評判に。「当時、祖父は注文を受けて京都駅で止まっている新幹線に豆腐を持って行ったときいています」。

こんなに有名店になっても、森嘉では一つひとつ昔ながらの手作業で豆腐や飛竜頭(関東で、がんもどきのこと)、油揚げなどを作っています。豆腐を作る大豆は、今も薪を使い、おくどさんで炊いているのだそうです。

邦夫さんに豆腐作りのことを伺うと、とても楽しいと言います。「年々で豆の出来も違うし、時期で状態も違います。ですから豆をふやかす時間も違いますし、炊き方も変わる。こんなにシンプルでわかりやすいモノづくりはないなと思っています。作業は毎回同じですけれど、知れば知るほど、ここをもう少しこうしたい、とか考えることが多いですね。でも、最終的には、やはり美味しくなければいけないと思っています」(邦夫さんは真ん中)。

ところで、森嘉といえば豆腐のパッケージや包装紙に描かれたイラストが印象的。「これは味について意見を伺うなど懇意にしていた国泰寺管長の稲葉心田老師がある日、『絵を描いてきたから包装紙にしてみたら』と持ってこられたそうで、それを今も大切に使わせていただいています。うちの看板の字も老師の筆になるものです」。

森嘉の豆腐を味わうには、シンプルに醤油でいただくか、湯豆腐で食べるのが一番。でも、家に帰ってからではなく、今すぐに食べたいという時は、清凉寺境内にある料理店・竹仙で「ゆどうふおまかせ」などをいただくのもおすすめ。お参りの後に立ち寄ってはいかがでしょう。

 

清凉寺

住所:京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46

TEL:075-861-0343

時間:9:00~16:00

休み、料金:境内自由

※本堂拝観400円、共通券(本堂・庭園・霊宝館)700円

WEBサイト:http://seiryoji.or.jp/

 

京料理ゆどうふ 竹仙

住所:京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46番地 釈迦堂清凉寺内

TEL:075-882-3074

時間:10:00~17:00 (LO 16:30)

17:00~19:00 (LO 18:30) 

※要予約 / 10~40名様のご予約のみ

休み:木曜日 ※4、10、11月は無休

WEBサイト:http://www.kyoto-chikusen.com/

 

嵯峨豆腐 森嘉

住所:京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町42

TEL:075-872-3955

時間:8:00~18:00 (但し8/16、12/31は売切れ次第閉店休み)

休み:水曜(火曜日定休あり) ※祝日の場合は営業、翌日休み

WEBサイトhttp://sagatofu-morika.co.jp/

 

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