下鴨 芹生

地元民が集う、下鴨の隠れた名居酒屋

―文:山下まり子、写真:佐藤佑樹

 

初夏には蛍が飛び交う琵琶湖疏水のほど近く、閑静な住宅街にそのお店はあります。旬の食材を使った京料理を、美味しいお酒と一緒に楽しめる居酒屋・芹生。地元の方が多く訪れ、40年間この地で愛されてきたお店です。

店内は夕暮れどきから大学生、商店街の組合員、大学教授まで、多くのお客さんで大賑わい。地元の常連さんが集う場所になっているのが、芹生が持つ大きな魅力です。しかし親しみやすい雰囲気に反し、出てくるお料理はどれも本格派。京都に数多く居酒屋はあれど、京料理をここまで財布に優しいお値段でいただけるお店は少ないのではないでしょうか。

 

暖簾をくぐると、カウンターの向こうでマスター、おかみさん、板前さんが手際よく料理を仕上げていく様子が見られます。カウンター前のショーケースにずらりと並ぶのは、毎朝マスターが市場で仕入れた新鮮な魚介類です。この日入ったのはヨコワガツオ、タイ、ヒラメ、イカ、ハモ……。「マスター、今日のおすすめは?」なんて会話が楽しめるのもこの店ならでは。笑顔が光るマスターが、その日一番美味しい食材を、一番美味しい方法で調理してくれます。

夏におすすめは、ハモのおとし、夏野菜の冷やし鉢、鮎の塩焼き、丸なす田楽などなど。どれも京都の夏に味わいたい、旬がつまったお料理です。こと、あゆに関しては先ほどまでいけすで泳いでいたという新鮮さ! 注文が通るたび、バイトさんが一匹ずつ網ですくってきてくれます。

そして季節を問わず、私が必ずおすすめしているメニューが「葛引き豆腐」です。とろみのついた出汁に、たっぷりのお野菜、豆腐、商店街の鳥肉屋さんで仕入れたモモ肉を絡め、仕上げにおろしショウガをどっさりと乗せて完成。風邪をひくと食べたくなる居酒屋メニューは後にも先にもこれだけです。この優しい味に、決して飾らない芹生の良さが滲み出ている気がしてなりません。訪れた際には、ぜひ食してもらいたい一品です。

そしてこのお店のもう一つの主役、美味しいお酒を忘れてはなりません。お酒はマスターが自分で飲んで美味しいと思ったものだけを仕入れるそう。お店には、京都や東北のお酒を中心に、さまざまな銘柄が揃います。夏におすすめしたいのは、やっぱり冷酒。青モミジが散らされた氷に乗って供される冷酒は、暑い日を締めくくる最高のお供といえるでしょう。

 

「体が動く限りは店をやっていたい」と話すマスターの西川和昭さんは、なんと今年で75歳を迎えます。マスターの人柄と確かな腕を慕って見覚えのある顔ぶれが集うこのお店。温かな雰囲気は、ご新規さんをも魅了してしまいます。一番嬉しいのはお客さんが喜んでくれることだ、と笑うマスター。夏の夕暮れ、私はやっぱり今晩も、芹生に行きたくなるのです。

 

下鴨 芹生

住所:京都市左京区下鴨西半木町82(地図

TEL:075-721-5846

営業時間:17:00~24:00 (LO 23:00)

定休日:月曜

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