先斗町番号路地

道と道、人と人をつなぐ“路地的なもの”

文:土橋健司、写真:光川貴浩

五花街のひとつ先斗町は、祇園と同じく、番号札の掲げられた路地が点在しています。なかには札のない路地もありますが、現在確認できる範囲では2番路地から25番路地まで存在し、その多くの路地が先斗町と木屋町通間を結ぶ図子になっています。

京都市内の多くの地域が1864年の大火災「どんどん焼け」によって建て替え整理されたなか、先斗町あたりは幸いにも火災の影響が少なく、通りの拡幅がなされませんでした。そのため、江戸時代のままの地割や建物が残り、現在もその区割りや路地の_構成を踏襲しています。1872~1873年(明治5~6年)に、遊郭についての調査を記した『京都府下遊廓由緒』には、先斗町界隈の路地の様子が細かく記されており、今より数多くの路地があったことがわかっています。

先斗町を歩いていると番号札の看板や提灯には”千鳥”の紋章があしらわれていることに気づくはずです。これは明治初期に「鴨川おどり」の創設をきっかけにつくられた花街のシンボルデザイン。また「よたよた千鳥」という愛称もあり、飲み屋が連なる界隈の酔客に合わせて、酔いのまわった千鳥足から名付けられたという洒落もよく耳にします。そんな言われたい放題の千鳥ですが「通り抜けできます」「通り抜けできません」と、きちんと道案内をしてくれています。

また、幕末の志士が残した刀傷が現存するという路地など、界隈の歴史を物語る史跡もいくつかあります。たとえば、15番路地にある「十五大明神」。1977年に火災が発生した際に、鎮火したのが十五番路地のちょうど手前だったそうです。そこにまっぷたつに割れた狸の置物があり、身代わりになってくれたのだと感謝した[ますだ]の女将さんが、狸を「十五大明神」として祀ったのがはじまり。先斗町を訪れる際は、ぜひ厄介ごとを払うつもりで訪れてみてください。

個人的によく足を運ぶのは13番路地。木屋町通側から入れば青白い壁が続き、ほの暗い水底を歩いているかのようなムーディな雰囲気を醸しています。路地のなかにあるバー[石丸商店]は、連日遅くなるほどに人が集い、そのモットーは「がんばらないこと」という店主のなんともユル~い空気が最高に落ち着きます。界隈で働く飲食店の方が閉店後に毎日のように訪れる一方、外国人の観光客も多く、地元民と観光客とが混じり合い、お互いにすぐに打ち解ける空気があります。地元民の日常を支える木屋町と、観光客に愛される先斗町のちょうど中間にあって、道と道、人と人をつなぐ“路地的なもの”が、この店にはあるように思います。ぜひ、路地裏めぐりのラストに訪れてみてください。いつでも夜遅くでも、店は開いていますから。

<石丸商店>
住所:京都市中京区木屋町通四条上ル13番路地東入北側(地図)
TEL:075-213-0966
営業時間:18:00~翌6:00
定休日:無休

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