宮川町

路地をぬけると、そこは非日常の京都

文:土橋健司、写真:光川貴浩

あじき路地から、さらに大黒町通を2筋北に上がると、長い西向きの図子が現れます。「バイク・自転車は歩いて通りましょう」という看板が目印です。こちらの道を通じて、西側の宮川町に向かうとおすすめです。

宮川町が花街として認可されたのは江戸中期の1751年、いまでも多くのお茶屋が軒を連ねています。鴨川東筋に沿った細い道筋のことを宮川筋と呼び、四条通付近から五条通をつなぎ、通りの周囲に位置する2丁目から6丁目を花街としています。界隈には大小さまざまな路地が存在し、芸舞妓さんが往来する光景もここでは日常の光景。石畳の舗装された美しい宮川筋から脇をそれて進めば、一変して生活の匂いがする住宅街へ出ることもしばしば。隣接するハレとケの暮らしを、路地を介して感じられるエリアです。また、通りに面した路地の入口上部が建物で覆われた〝トンネル路地″が多いのも特徴。暗いトンネルを抜けると風景が大きく切り替わるため、異国に訪れたような錯覚を味わうこともできます。

さてこの宮川町周辺は、花街がもつ独特の非日常感があり、表構えに圧倒されたり、路地がとても細く薄暗かったり…。「ほんとうに入っても大丈夫かな?」と心配になるような路地も点在しています。しかし、そうしたためらいの生まれる場所にこそ、名店が存在しているのも路地の定説。たとえば、手紙まわりのオリジナル文具を扱う[裏具]も、光のほとんど届かない暗く長い路地を抜けた先にあります。路地の奥にはお茶屋を改装した品のよい店舗があり、はがきや便箋、そして小さなメモ「まめも」など「書くこと」にまつわるグッズを販売。和風にとらわれないビビッドな色彩や、カエルやコウモリといった少し毒々しいモチーフのデザインは、花街の路地裏という場所にあって、さらにしっくりきます。ウチとソトのやわらかな境界線となるべく、路地のなかに暖簾かけた憎い演出もあり…「嬉ぐ」という言葉から生まれた店名通り、訪れるたびに心がうれしく騒ぎます。

[裏具]の路地を南側に抜けた先、東西に走る図子を東に進むと、「京都ゑびす神社」の裏門にたどり着きます。鎌倉時代の禅僧である栄西が建仁寺を建立する際に、その鎮守として境内に祀ったのがはじまりとされている由緒ある神社。応仁の乱後、現在地へ移されたといわれています。毎年1月10日の「十日ゑびす大祭」を含む前後5日間には商売繁盛を願い、京都全域から参拝者が訪れます。そんな多くの人が詣でる場所ですが、普段のひっそりとした境内を訪れたことのある人は、意外に少ないのではないでしょうか。ゑびす様はご高齢のためお耳が遠いといわれているので、祭りの日に方々から一斉に願いを言われるよりも、静かなケの日に声をかけたほうが、商売繁盛の願いが届くかもしれません。

<裏具>
住所:京都市東山区宮川筋4-297(地図)
TEL:075-551-1357
営業時間:12:00~18:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)

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