あじき路地

若手作家が職住一体の生活を営む路地

文:土橋健司、写真:光川貴浩

路地をひとつの家族として捉えるならば、大家さんはお母さんで、店子は子ども。そうした例えがぴったりとハマるのがこちらの路地です。住人たちから母と慕われているのが大家の安食弘子さん。築100年以上の長屋を改修し、ものづくりに携わるクリエイターを募ったのが2004年のこと。アトリエとしてだけではなく、そこに暮らすことを条件にして入居者を探し、住人を含めた「家族会議」を開いて、新しい入居者を決めるというユニークな取り組みを進めてきました。

こうしたスタイルで入居した若手の職人や作家を職住一体の長屋暮らしで支援。実際、この路地から多くの〝卒業生”を輩出し、なかには自らの店舗を構え、独り立ちを果たした人も少なくありません。いまや京都のクリエイター村のような存在として広く名を馳せましたが、かつて空き家の時期が長く続き、建物も老朽化して放置され、廃墟のようになっていたそうです。安食さんを中心に、住まう人、訪れる人の双方が楽しむことができる新しい路地のかたちを確立して見事に息を吹き返し、その後、京都でにわかに起こる路地ブームの火付け役になります。

現在、住人たちの多くは平日はものづくりを行い、週末にお店を開きます。1本1本手染めしてクラシカルながらも独自の色調のドライフラワーをつくる[ドライフラワーと造花 ブロー イン ハウス]や、約10項目を細かく計測してぴったりサイズのオーダー帽子が評判の[evo-see]など、どの作家も実直にものづくりに向き合っています。ゆったりとした長屋の風情を楽しみながら、作家自らが作品の解説をしてくれるので、ここにしかない楽しみにあふれています。また、[日曜日のパン屋さん]は、フランス人の店主が焼いたルヴァンやバゲットといったハード系のパンが並び、路地で唯一のカフェコーナーも併設。平日でもオープンしています。

かつて祇園の芸者が暮らしていたといわれる明治期築の長屋は、路地の両側にまっすぐ沿うように建ち並び、景観を今に残しています。豊富な地下水をもつ京都ならではの共有井戸やポンプ(※飲み水ではありません)、それに万が一の火事に備えた防火バケツや防災グッズ。毎日、住人が持ち回りでお世話しているお地蔵さんもあり、軒先には昔ながらの電球灯や牛乳瓶入れ…路地らしい光景を演出してくれる定番のアイテムがズラリと揃い、まるで昔にタイムスリップしたような懐かしさを感じることができます。これから路地めぐりをはじめる方には、ぜひ一度訪れてほしい場所です。

<ドライフラワーと造花 ブロー イン ハウス>
住所:住所:京都市東山区大黒町通松原下ル2丁目山城町284 南10(地図)
TEL:090-6552-0768
営業時間:11:00~19:00
定休日:土・日曜のみ営業
WEBサイト:http://www.blow-in.jp/

<evo-see>
住所:住所:京都市東山区大黒町通松原下ル2丁目山城町284 北4(地図)
TEL:075-708-6480
営業時間:12:00~19:00
定休日:金・土・日曜、祝日のみ営業

<日曜日のパン屋さん>
住所:住所:京都市東山区大黒町通松原下ル2丁目山城町284 南1(地図)
TEL:なし
営業時間:10:00~売り切れ次第終了
定休日:水曜

LINEで送る