膏薬図子

 

新旧の文化を調和させる町内の自治意識

文:土橋健司、写真:光川貴浩

膏薬図子(こうやくずし)は、四条通から一筋南の綾小路通までを貫き、その中間あたりで直角に曲がったカギ型の図子です。さらに図子のなかにT字型の路地が存在する複合的な構造になっており、その突き当たりには小さなお地蔵さんが祀られ、とても京都らしい風情を感じることができます。

こちらの図子も歴史は古く、江戸中期の文献にもその名前を残しています。かつて空也上人がこの図子で道場を建て念仏修行をはじめたといわれ、「くうや」の道場がいつのまにか「こうやく」と訛り、「こうやくずし」という名前になったと伝えられています。また、空也上人の道場だけでなく、平将門の首がくつがされた場所という伝承も残り、その供養塚が図子のなかにあります。

界隈は、祇園祭の”山鉾”を有する山鉾町が点在し、祇園祭のときに訪れると、ちょうど図子の北方面の四条通側に郭巨山、南方面の綾小路側に伯牙山が建ちます。宵山には浴衣姿の祭客が往来し、いつもの静かさから一変、とても華やかな装いにつつまれます。図子の南東に隣接した杉本家は、国指定重要文化財であり、市内最大規模の京町家。祇園祭では屏風祭のお飾り場となり、”ハレ”の京都を存分に堪能できます。

昨今、図子のなかには、気軽に立ち寄りやすいショップが増えつつあり、なかでもぜひ訪れたいのが[竹笹堂]。明治初期に建てられたという町家の店舗には、美しい色とりどりの木版雑貨が並んでいます。3色摺りのマカロンや2色摺りのボタニック・竹柄があしらわれた定番のブックカバーやしおりのほか、京都のイラストレーター・カンバラクニエ氏とコラボレーションした木版画作品も販売。おみやげはもちろん、ちょっとしたお礼返しのアイテムを探すのにぴったりです。

古くからの史跡が残り、先人たちの残した美しい街並みを維持しながらも、新たな文化を受け入れるために、こちらの図子を有する新釜座町では独自の「膏薬辻式目」を定められました。京都の古くからの習慣である「かど掃き」による清掃活動や、建物や表構えを含めた景観について決まりごとをつくり、ご近所付き合いを大切にされています。図子のなかに式目を記した張り紙があり、町の自治意識の高さが伺えます。

<竹笹堂>
住所:京都市下京区綾小路通西洞院東入新釜座町737(地図)
TEL:075-353-8585
営業時間:11:00~18:00(季節によって変動あり)
定休日:日曜、祝日

 

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