山下慶秀堂

全国にただ1軒の調べ緒職人に学ぶ、鼓打ち体験

文:佐々木歩、写真:本間腕

高野川から1本西の下鴨東通を北大路通から南に下る下鴨神社北東の閑静な住宅街に、「調べ緒」を作る職人がいます。調べ緒とは、能楽や歌舞伎、民謡、長唄などで使われる大鼓(おおかわ)や小鼓(こつづみ)、太鼓など和楽器に締められた鮮やかな色の紐のことで、音の高低を調整する重要な役割を持っています。

平安時代末期には白拍子や猿楽の演奏として使われ、室町時代の能楽の確立と共に、囃子楽器として発達した鼓は、2枚の皮、桜の木をくり抜き蒔絵を施された胴、皮を胴に取り付ける調べ緒で構成されています。この調べ緒を演奏中に握ると固く高い音になり、緩めると柔らかな音になります。調べ緒の原料は麻。水にさらしてアクを抜きながら踏んだり絞ったりして1週間かけて柔らかくし、一旦干します。

乾いたら何度も叩いて繊維状にしてから手で綯(な)います。途中で麻を継ぎ足しながら、小鼓なら8m70cm、大鼓なら10mの長さに。染料で染め、七分ほど乾いた時にひげと呼ばれるはみ出た麻を切り取り、乾くと完成です。「固くも柔らかくもない。ふっくらと芯があって滑りが良い調べ緒に仕上げなければなりません」と語るのは、山下慶秀堂5代目の山下雄治さん。

山下さんは工務店の三男坊として生まれ家業を継ぐ予定でしたが、「兄たちが戻って来て家業を継ぐと言う。では自分はこれからどうしようと悩んでいたところ、師匠(慶秀堂4代目山下秀次郎)に出会いまして、調べ緒という存在を知りました。18歳の時です。以来、住み込みで職人としての道を歩み続けてきました」。

光沢があって、しなやかながら芯もある。「一級品の調べ緒は手に持っただけで違いが分かります。一般によく目にするのは朱色に染められた調べ緒ですが、鼓の家元クラスになると紫と白に染めた調べ緒が使われます。全国に何百人と鼓の奏者がいますが、この調べ緒を作る職人はたったの5人」。その中の1人は山下さん、そして山下さんのお弟子さん2人がいらっしゃいます。

山下慶秀堂では、調べ緒制作の一部として麻を綯うことと、鼓打ちが体験できます。概要をまとめた映像も見せてもらえるので、実際には何日もかかる工程をよく理解することができるうえ、実物を手にとりながら詳しく説明してくれるので、鼓とは何かを知ることができます。

鼓を左手に持ち、右肩に添え、右手で「ポン!」と音を響かせたいところですが、なかなか難しいものです。それでも、山下さんのアドバイスに従い何度も打つうち、時折いい音が出てくるようになっていきます。今まで鼓に触れたことのない、全く縁のない人にとって、まさに感動的な体験となること、間違いありません。

体験は、事前に電話予約を。2名以上で、10名以上の場合は要相談です。

 


山下慶秀堂
住所:京都市左京区下鴨森ケ前町68(地図)
TEL:075-781-2873
要予約
体験時間・料金:1時間30分程度・2,000円(申し込み時に相談)

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