細見美術館

地下へといざなう美術館で非日常を楽しむ

ー文:中村慶子

平安神宮周辺は京都屈指の文化ゾーン。国立近代美術館、京都市美術館の二大美術館が有名ですが、意欲的に文化発信する財団の美術館も見逃せません。2016年2~4月に「春画展」を開催して話題を呼んだ、細見美術館を訪れました。大阪で活躍し、毛織物で材を成した実業家の細見家。初代・細見良(古香庵)氏から現在の細見良行館長まで3代が収集した縄文時代から近代美術まで幅広い古美術品コレクションをもとに、1998年に開館しました。常設展は設けず、折々のテーマで企画展のみを開くことで知られています。

2013~14年に大英博物館で開催された「春画―日本美術の性とたのしみ」展が「世界が先に動いた」と話題になり、2015年に東京で待望の「春画展」が開催されました。優れた春画がまとまった形で公開されたのは国内で初めて。その巡回展が開かれているだけあって、会期後半に訪れるとかなり混雑しています。「待ち時間30分」などと混雑状況を知らせる公式ツイッターのおかげで比較的空いているときに出かけられたのが幸い。列に並ばず入館でき、ひと安心しました。

外からは小ぢんまりとした建物に見えましたが、館内に入って立派な地下を見ると印象が変わりました。地上3階、地下2階。中央が吹き抜け構造になっているのでずいぶん広く感じます。景観条例で建物の高さなどに規制があるために取られた策だそうです。「和モダン」をテーマとした展示室がフロアごとにあり計3室。どこも込み合ってはいましたが、天井が高いのであまり気にならず鑑賞できました。海女が蛸に襲われる描写で有名な葛飾北斎の木版画「喜能会之故真通」、喜多川歌麿の「歌まくら」など見ごたえある名品がズラリ。江戸っ子気質のようにあっけらかんと明るかったり、しとやかで情緒豊かだったりと作者にとって作風はさまざま。大名家が子孫繁栄を願って嫁入り道具として春画を持たせていた歴史や、女性の着物を丹念に描く春画が多いのは版元が呉服屋とタイアップしていたからというエピソードなども紹介してあり、ファンならずとも楽しめる内容。まず地上から入館、「展示室で鑑賞」「退室して外付け階段を下りる」を2回繰り返して最下層に出る迷路のような順路も楽しく、鑑賞する気持ちにメリハリがつけられました。

最後の展示室の扉を開けると、併設のショップ「ARTCUBE SHOP」へ。ニューヨーク近代美術館(MoMA)を参考にしたショップで、企画展に関するグッズや神坂雪佳「金魚玉図」がデザインされたオリジナルグッズなどセンスの光る品々がそろいます。「CAFÉ CUBE」とともに入館料なしで利用できます。

ショップを出ると、そこは最下層の吹き抜け。曇った昼下がりでしたが、上部からの光が差し込み、暗い印象はありません。半オープンスタイルのカフェに立ち寄り、外でも内でもない空間にしばし身を置いてコーヒーを楽しみました。

細見美術館
住所:京都市左京区岡崎最勝寺町6-3(地図)
TEL:075-752-5555
営業時間:10:00(カフェ10:30)~18:00
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)、展示替期間
WEBサイト:www.emuseum.or.jp

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