酒器 今宵堂

日本酒ファンにうれしい酒器工房&ギャラリー

ー文:中村慶子、写真:大島拓也

北山通と鴨川に近い閑静な住宅街。丁寧に手入れされた町家があり、玄関脇の壁付け棚に「酒器 今宵堂」のネームカードと酒器がかわいくディスプレイされています。上原連さん、梨恵さん夫妻が週末に営む、酒器の工房。中にお邪魔すると、土間に電気窯が置かれ、小ぢんまりした和空間には古い家具とご夫婦が制作した酒器が品よく並んでいます。

徳利、猪口、盃、肴を盛る小皿…。お酒の色をきれいに出すため、有田(佐賀)や出石(兵庫)の土を用いた白磁の酒器を多く手がけています。神前結婚式の三々九度を彷彿とさせる「白瓷平盃」(2000円+税)は、薄い口縁の美しさが際立ちます。「ひじが上がり、背筋が伸びる持ち姿が好きです。お燗酒に適していますよ」。ユーモアあふれる酒器が多いのも特徴です。盃で目を引くのが、逆さにふせると雪をいただいた富士山に見える「富士ノ山盃」(1800円+税)。お猪口では、底面に千鳥が突起するためふらふらする「千鳥足猪口」(同)、ハート型の小さな穴を指で抑えて飲んでもらい「お酒も愛もこぼさないで」のメッセージを伝える「ハート射抜猪口」(同)など。「お酒を飲むのは心うれしい時間なので、場がより楽しくなるような酒器も作っています。作陶も案を練るのも、分業せずに2人でやっていますね」

睦まじいご夫婦のお酒のシーンについてお尋ねすると、「今宵堂 晩酌帖」のInstagramに答えがありました。日々の酒卓の写真が並び、1冊の本にもまとめられています。晩ごはん前、1杯のお酒と簡単な肴を用意して過ごすひととき。1日を振り返りながら晩酌する側で、3歳の娘さんも肴をつまんで楽しむそうです。日本酒だけでなくビールやワインの日もあり、肴は手作りから買ってきたお惣菜、缶詰までいろいろ。酒卓を囲む家族の風景が目に浮かびます。

京都市内の職業訓練校で陶芸を学んだ同級生。ともにお酒が好きで感性の似た2人はのちに結婚し、お酒にまつわる器を作ることを生業にしました。「今宵堂」をオープンしたのちは、全国から訪れる飲兵衛から、各地のおいしい酒や文化についてあれこれ教わるようになりました。静岡、岩手、福岡、岡山、山形…土地の名物や文化をテーマに酒器を作り、現地で展示会を開くこともしばしば。「お酒の文化を楽しみつつ酒器を作り続けたい」という2人。今後の活動と作品も楽しみです。


〈酒器 今宵堂〉
住所:京都市北区小山上内河原町52-5(地図
TEL:075-493-7651
営業日:土曜、日曜、祝日
営業時間:12:00~18:00
WEBサイト:http://www.koyoido.com
※展示販売している器の種類は生産状況などにより異なります

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