静好堂中島

細部にこだわった丹念な仕事ぶりで抜きん出る表具工房

ー文:中村慶子、写真:マツダナオキ

大徳寺に近い新大宮通商店街を歩いていると、木に「表具師」と彫られた看板を発見。京町家の趣をそのままに残した工房へお邪魔しました。襖や畳の美しい設えが目に入り、個人のお宅のようです。職人さんが作業している2階へ通していただくと、3代目の中島實さんと長男の匠さんが迎えてくださいました。名刺には「裏千家職家表具師」とあります。

掛軸、襖、障子、屏風など表具全般を手がける表具師。先代が裏千家の家元に出入りしていた関係で茶室の仕事が多く、老舗旅館「俵屋」や松下幸之助の別館なども手がけてきました。もちろん、一般住宅の障子の張り替えも行います。

広々としたスペースで、12人の職人さんが分業で仕事をしています。この日は掛軸。書画が描かれた本紙の裏から滲まないように霧吹きで皺を取り除き、薄い紙を貼り丈夫にする裏打ちが行われていました。軸を仕立てる場所では、最後の裏打ちの紙が表面から見えないようにミリ単位で裏面を細く控えてそぎ落とします。これを「耳すき」と言うそうです。「お客さんの大切な美術品を預かっているので神経を使う作業の連続です」と、この道もうすぐ50年の實さん。急ぎではないお客さんの掛軸なら、1年かけて自然な加湿、乾燥を繰り返して納品する丁寧な仕事ぶり。何段階もの工程と点検を経て、控えめながら品格のある掛軸が完成するのです。

長男の匠さんは表具師になって16年。大手自動車メーカーの営業マンを経て、家業を継ぐことを志しました。「営業マンにはやりがいを感じていましたが、ある日表具を作る現場を見ていると新鮮な感動があって、思い立ちました。自分にしかできないことをしようと」。そこから修行を積んで現場への納品を任されるまでになり、實さんの一流の仕事を引き継いでいます。

一方で、感性を生かして表具の魅力向上にも取り組んでいます。襖に美しく光を取り込むため、引き手部分の土台を木ではなくアクリル板にして透過を邪魔しないよう工夫。古い着物を屏風に仕立てるなど、現代生活に取り入れやすい表具も発信しています。

さらに、景アートや二葉葵展実行委員会にも参加。和紙に仕込んだ桜の絵が、ライトを当てたときだけ屏風に浮き上がり、夜桜を愛でているような気分が味わえる作品が高評価を受けました。「職人の仕事に陽のあたる機会を設けて、面白く発信していきたい。3人の息子が将来この仕事をやりたいと思ってくれるように」と話すこれからの京表具の担い手。終始穏やかな表情が印象的でした。

〈静好堂中島〉
住所:京都市北区紫野門前町46(地図
TEL:075-492-1601
営業時間:8:00~17:00
定休日:日曜、年始、不定休あり

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