稲栄呑み喰い亭 かき谷

グルメな営業マンが受け継いだ老舗の居酒屋

ー文:牟田悠、写真:高木かおる

車通りの多い五条通りから一筋北に入った、万寿寺通り。夕闇が迫り始めた細い道を、冷たい北風から逃げるように早足で歩いていると、「かき谷」と記された提灯が目に入りました。いそいそと暖簾をくぐります。

かき谷 外観 

〈稲栄呑み喰い亭 かき谷〉は、昭和3年創業の歴史ある居酒屋さん。現在の大将が3代目にあたります。

初代は、大将のおじいさん。当時は居酒屋さんではなく仕出し屋さんでした。今も店名に含まれている「稲栄(いなえ)」は、そのときの屋号なのだそうです。

お店を継ぐ前はサラリーマンだったという大将。その頃の経験が、現在の料理に反映されているといいます。

「長いこと営業をしていて、地方に出張するたびにそこで色々なものを食べていたんですよ。あるとき、先輩に『色んな土地の美味しいものを一個ずつ覚えていったら、良い店ができるんちゃうか』っていわれたのがきっかけで、今のお店ができたんです」。

 かき谷 大将

3代目大将の垣谷さん。

イチオシはお魚とのことだったので、まずはお造り盛り合わせを注文しました。

この日の内容は、冬の味覚であるブリ、サワラ、カンパチ、シマアジ。甘い脂が、口のなかでまったりと溶けていきます。わさびとお醤油だけでも十分美味しいのですが、添えられていたスダチを絞ると、驚くほどの好相性。さわやかな香りと酸味が、脂の乗った冬の魚の味を一気に引き立てます。

かき谷 料理1 

かき谷 日本酒

伏見の名酒「英勲 やどりぎ」。美しい切り子のグラスに入っているのがうれしい。

仕出し屋さん時代から味を受け継いでいるという、出し巻も外せません。

金色でふわふわの卵は、見ているだけで幸福感に包まれます。一口食べれば、出汁がジュワッとあふれてきました。胃の中がホッとあたたまる、優しい味わいです。

かき谷 料理2存在感のあるお皿にもご注目を。信楽焼と伊賀焼を中心に集めているのだそう。

カウンターの上で煮えていたおでんも、寒い日にはとくに魅惑的です。大根からいただくと、フワッと柚子が香りました。お出汁のなかに入っているそうです。

気になったのは、「ぎょうざ天」。その名の通り、天ぷらのなかにぎょうざが入っていて、お酒とよく合います。

「博多に行ったときにシュウマイやギョウザが入っているおでんを見つけて、面白いなと思ったんです。錦市場の『丸常蒲鉾店』さんにオーダーして作ってもらっています」。

かき谷 料理3

ぎょうざ天(左)と大根(右)。大根にはとろろ昆布が乗っています。

お酒もすすみ、そろそろお腹もいっぱいかな…と思い始めたとき、おでんのメニュー表に「半熟卵」の文字を発見してしまいました。

運ばれてきた卵は、白身が茶色く染まっているのに、中心はとろとろ!煮込まず出汁につけておいて、出す直前に温めるのだそうです。味が染み込んでいて絶品でした。

 かき谷 料理4

開店してから1時間も経たないうちに満席になってきたのでおいとましようとしたところ、常連さんが声をくれました。

「ここはね、絶対間違いない。大将が本当に美味しいって納得したものしか出さないからね」と、太鼓判。その言葉に心からうなずきながら、幸せな気持ちでいっぱいになりました。

 

〈稲栄呑み喰い亭 かき谷〉

住所:京都市下京区 万寿寺通高倉東入官社殿町201

TEL:075-351-3402

営業時間: 11:30~13:30(限定20食。売切れ次第終了)、18:00~23:00(22:30L.O)

定休日:日曜、祝日

WEBサイト:http://kakitani.net/

 

 

LINEで送る