満寿形屋

 鯖街道の終着点で味わう、とっておきの鯖寿司。

―文・写真 |馬場健太 

鯖寿司という、ご馳走。

 

京都に滞在し始めて、約半年ほどが経ち
「京都ではじめて食べて、感動したもの」がいくつもあります。

 

 「鯖寿司」はそのうちのひとつで、

これまでに食べた「押し寿司」と
京都でいただく鯖寿司は、味の奥深さが全然ちがって、(良い意味での)カルチャーショックを受けました。

京都では昔から、お祭り事や、おめでたいときに各家庭でつくられた「ご馳走」で、
つくる人のこだわりも、それをみつめる眼差しも、特別なものを感じます。

鯖街道の終着点・出町商店街

鯖寿司のルーツは
「かつて、若狭湾で獲れた鯖を京都まで運ぶ際に塩を振り、移動する2~3日の間に
ちょうどよい塩加減になったものをお寿司にしたことから」 はじまり

若狭湾(小浜)から京都を結ぶ道は
鯖のみならず様々な海の幸や交易品が行き交い「鯖街道」として現在もその名を広く知られております。

 その鯖街道の終点にあたるのが、出町商店街。地元の人々に愛され、常に活気のある商店街です。

「鯖街道ゆかりの地で、おいしい鯖寿司を食べたい!」

旅行者のみならず京都の人々も抱くであろう、このまっすぐな欲求に
90年以上に渡り応え続けてきたのが、ここ〈満寿形屋〉。
鯖寿司には目がない!という鯖寿司ラバーも名前を挙げることの多い名店です。

 

2時間で売り切れる鯖寿司

もう、この、見るからに美味しそうな鯖寿司ですが、

1本まるごとだと、およそ2500円からという、お値段も「ごちそう」価格。

普段の、お昼ごはんに食べたいときには
手が届かない!と思いきや、

うどんとセットで1000円から。

〈満寿形屋〉には旅行者や、はじめてお店を訪れる人にも嬉しい「鯖寿司 うどんセット」があるのです。
「特上鯖寿司」2切れと、かけうどんで1000円。

この日は特上鯖寿司 1人前 5切れで 2250円だったので
1切れあたり400円ちょっとだとしても
どう見積もってもお得なお値段です。

ただ、とびきり美味しい上にリーズナブルな為、最近では開店2時間で売り切れることもしばしば...!

 

人生で何度目かの鯖寿司としては
もったいないくらいに立派です...!

かみしめるたびにほどよくきいたまろやかなお酢と
鯖のうまみが口いっぱいにひろがり、
ふいに白板昆布と鯖にあいだに挟まれた山椒の香りが訪れて美味しさを一層ひきたてます。
二切れで、とてもリッチな気分になりました。

 

ついつい鯖寿司ばかりに目がいってしまいますが、うどんも絶品でした。京都ならではの、やさしくて、奥深いお出汁。

 

鯖寿司をつくっているのは、満寿形屋 3代目のご主人・梅垣昌治さん。
大学卒業後、7年間の修業を経て満寿形屋を受け継ぎ、鯖寿司と向き合い続けて30年余り。

どの季節でも、心から納得がいく鯖寿司をつくれるようになったのは
「ここ10年くらい」のことなのだそう。

「(鯖寿司作りで)数えきれんほどの、失敗をしてきたよ。もうほんと、教えられへんくらい」 

失敗がないと、成功はありえへん。と梅垣さんは繰り返して言います。
先代から受け継いできたつくり方もあるけれど、
四季を通じて、いつでもとびきり美味しい鯖寿司を食べてもらえるように
数えきれないくらいのトライ&エラーを繰り返してきたそう。

 

代々変わらないのは、京都生まれのお酢と、敷地内の湧き水をつかうこと。そして、鯖を寝かせるための「氷の冷凍庫」。

 「どれくらいの時間寝かせるか、ゆうのは鯖によって全然ちがう。これはもうなんとも言えん、勘やね」

 

山椒を挟むアレンジや、酢の加減も、
梅垣さんによる30年以上の積み重ねの賜物。  

さらに、日本各地を旅してまわり、
鯖をはじめとして、
全国のおいしいものを自身の舌で確かめてきた梅垣さん。

  

「千葉も、仙台も、新潟の鯖も八戸の鯖もみてる。八戸のもなかなかうまいで。あそこでは、漁船にも乗ったなぁ。」

  「でも、ほんまにいちばんええのは
やっぱり、能登の鯖や。」 

「もうナンバーワン。日本海やったら、能登の鯖しかない。」 

「いまの時期、よく狙うとるんは豊後水道の鯖。四季を通じて、いちばん安定しておいしい鯖が獲れる。抜群。
ちなみに今日出してたんも、豊後の鯖です。」 

 

「おいしいもの」について語る梅垣さんはとても熱く、明るく、人生の大先輩にこういっては何だけど、無邪気。

 「まぁ、食道楽が実を結んだっちゅうやつやね。」

 季節に応じて、いちばん良いところから食材を仕入れるのはもちろんのこと
鯖寿司に使うお米に至っては、5年前から自身で畑をもち、直接農家と提携して、お米を育てているという徹底っぷり。

 

鯖も、おうどんも出汁も、その日仕込んだぶんだけ。
どれかがなくなったら、潔くその日は閉店。

「もっとやったらええんやけど
鯖が続かない。ようけ、段取りしてんねんけど

それ以上したら、どっかでひずんでくるから」

 

ご主人がこだわり抜いた「逸品」の鯖寿司を、より多くの人に気軽に食べてもらおうと「鯖寿司 うどんセット」を考案したのは、
実は梅垣さんの奥さん。

 

 しかし最近では人気に火がつきすぎたのか

「注文は、鯖寿司セットが9割」とのこと。ただ、鯖寿司以外にもおいしいそうなものばかり...なので

他にもおすすめのメニューを教えていただきました! 

「親子丼も、最近ファンが増えてきよるな。丹波の地鶏使いよるから」

 

「中華そばも、人気やな。あと鍋焼きうどんも、うちのはすごい。ぐわーっとね、具だくさんでね。」

 鯖寿司をお目当てに来たけれど、これは、通うしかなさそう....

「ほいで、うなぎ丼ぶりもよう出る。琵琶湖の鰻がたまに入るんやけど、うちの特上鰻丼は1匹まるごと使うから。ほんま、うまいで〜これは」

 (ぐ...特上鰻丼は3000円!!!)出世したら食べにきます!

 ちなみに、メニューは以前より、
よく出るものだけに絞って、厳選したものを残しているのだそうです。

 

鯖寿司のみならず、いい食材を仕入れて、京都の湧き水で出汁をとって、おいしさを最大限に引き出す。

大きく儲けすぎることをせずに、毎日、続けて、美味しいものを差し出すことに、
真摯に向き合い続ける。まさしく「京都らしい」お店だと、思います。

そしてここへ行くのに必要なのは、たくさんのお金を持っているかどうか、ではなくタイミングが合うかどうか、が大事です。(お昼の13時半以降は売り切れの可能性があります)

「京都にきたからには、せっかくならちょっと特別なものが食べたい」という方などはぜひ、ここへ正午ごろに着く工程で旅のプランを組み立ててみてください。

 

〈満寿形屋〉

住所:京都市上京区枡形通出町西入ル二神町179(地図
電話:075-231-4209
営業時間:12時〜18時(※売り切れ次第終了)
定休日:水曜
英語対応:可
予約:鯖寿司 お持ち帰りのみ可

 

 

 

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