金時

65年の朝仕込み。愛情と誇りのおいしいゴハンは<金時>で。

写真・文/石野亜童

 

おいしい。

 

そう思わせてくれるゴハンに出会えたとき
ぼくらはこのうえない多幸感に包まれます。
人間に生まれてきてよかった、そんなことさえ思わせてくれるほどです(自分は特に)。

 

「おいしい」の理由はいろいろあって

・素材

・味付け

・調理法

 

そして

「愛」だと思うのです。

 

ルーツはおかんが作ってくれたゴハンでしょう。「おいしくなれ、おいしくなれ」と気持ちを込めながら
ぼくらに作ってくれたおかんのゴハン。そこには間違いなく「愛」の魔法がかかっています。

 

<金時>のゴハンを食べたとき「あ、これは愛だ」そう思ったのでした。

なぜだかわからないけれど。

 

この日は「日替わり定食」をチョイス。

テーブルの上にはメニュー表。ニッポン人ならすぐに画が浮かぶ
スタンダードで永久不滅のお品書きたち。

そしてやってきました本日の「日替わり定食」。

まずは小鉢に盛られた品々をパクリ。

「あ...ぅま」声が漏れておはずかしい限り。

ふわふわに包まれた卵焼きはやさしいお出汁が効いていて

シャキシャキの野菜たちの和え物にはやさしいお出汁が効いていて。

さてメインのトンカツはサクサク衣にさっぱりコクある肉汁とソースが相まって

ピカピカお米とどんどんお箸が進み、ものの数分で完食。

 

昔ばあちゃんに「よく噛んで食べなさい」と言われておりましたがごめんなさい。

 

お箸を置き、店内を見渡すと(お腹が減っていたのでゴハンを優先してしまっていた)

料理がサーブされるカウンター横に設置された棚にズラリと並ぶ一品小鉢にゴクリ...

 

「うちはね、この一品料理の小鉢からはじまったんですよ」

そう話してくださったのは店主の藤井久雄さん。

「昔はお仕事してはる人たちみんなお昼の時間が短かったからね。
 好きな小鉢を選んでお米と味噌汁をつけて
 パッと食べて仕事に戻る。そんな時代でした。
 お店の前にクルマを停めて、立ち寄ってくれるお客さんも多かったですよ。
 今はちゃんとお昼休憩の時間があるからね、ゆっくりお店で注文して食べることができるでしょ?
 そこからうちも定食をお出しするようになったんです」

 

小鉢が並ぶカウンターの横には冷蔵庫。

定食にもう1品追加したくなっちゃうような小鉢たちがここにもズラリ。

「常連さんたちは今でも好きな小鉢にお米と味噌汁なスタイルですね」

お造りは完売!

「おいしいゴハンを食べるとものすごい幸せな気持ちになるんです」

そう話すと

 

「うちは65年、毎日朝の5時から仕込むんですよ。コンビニが出来て、食のカタチは変わってしもたけど、うちに来てくれるお客さんにはちゃんとしたもんを食べてもらいたい。この店でつくったもんやからね」

 

65年、朝の5時から仕込んでいる小鉢たち。

<金時>のゴハンを食べたとき、「これは愛だ」ととっさに感じた理由がぜんぶわかりました。

 

愛情と誇り。うまい理由はこれでした。

取材時は準備中だったのですが、まさに今の時期、金時名物「かす汁」が食べられるはずです。

 

親父さんが仕入れたばかりの酒粕を見せてくださいました。

「大鍋でいっきにつくれば効率はいいんだけどね、うちは注文いただいてから1杯ずつ作るんです」

 

昔ながらの本来の製法で1杯ずつ。酒粕のうまみも、具材の鮮度も

たっぷり濃厚で芯からあったまるかす汁。冬にはたまらんです。

 

<金時>ではさらにお弁当のオーダーもOKだそうです。

 

「そういえば」

親父さんがお店の奥から持ってきてくださったアルバムを拝見。

「いつかどっかで使えるとおもってね。つくった料理は写真撮ってるんです」

 

写真の精度もすばらしく、もはやアートブックです......

金時ブックをつくってみたい...編集者の性が騒ぎ出し、妄想と構想がフツフツと......

 

<金時>ではお昼のみならず晩ゴハンもいただけます。

 

「このへんはオフィスも多いし、最近ではホテルやゲストハウスも増えたから、夜に来られる方も多いですよ」

 

ここで「金時夜の部」の楽しみ方を伝授いただきましたので覚えておいてください。

 

「まずは好きなおかずの小鉢を取って席に着く。そっからビールや焼酎で一杯やりながら、つまみを追加していく。これがベストやね。常連さんたちはみんなそうしてはるよ。メニューにない料理も、材料があったらつくってあげるよ」

 

愛情の詰まった一品料理をつまみながらビールを一杯。これまた大好物のスタイル。

「金時夜の部」の参加を固く心に誓ったのです。

 

「うちでつくったもんを食べて元気に頑張ってほしい」

愛情と誇りを料理に込めて65年。

 

<金時>のゴハン、ぜひ。

<金時>

住所:京都府京都市下京区柿本町593-2(地図

電話:075-811-5903

営業時間:11:00~15:00 17:00~21:00頃

定休日:日曜、祝祭日

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