島津製作所 創業記念資料館

―文・写真    馬場健太

世界に誇る発明品の源流、京職人の姿勢と熱量に触れる。

 

京都の歴史ある企業やお店、ものづくりの源流を遡ると、
「京の都で育まれた職人技がルーツにあった」
というケースがしばしば見受けられます。

その代表的な例が、京都に本拠を置き、
分析・計測機器・医療機器、航空機器の製造において世界的に活躍する企業〈島津製作所〉です。

 

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木屋町二条の一角にある 〈島津製作所 創業記念資料館〉には
創業以来製造されてきた理化学器械や産業機器など約300点が並んでおり、
数々の日本初や世界初、ノーベル賞につながる発明を生み出したストーリーを学ぶことができます。

 

 

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ここはかつて、創業者の島津源蔵と2代目源蔵が暮らしていた住居でもあります。

 

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いかにも京都!らしい、日本家屋的な建物のため
「世界を牽引するハイテク企業の創業地」だとはにわかに信じがたいですが..

とにかく中へ入ってみましょう!

 

 

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最初に目にとびこんでくるのは、重厚なオーラを放つ医療機器たち。
これらは初期のX線撮影の装置で、〈島津製作所〉の代表的な製品です。

〈島津製作所〉がはじめてX線の撮影に成功したのは、1896年。
それはレントゲン博士によって世界ではじめてX線が発見された翌年という、驚異的なスピードでの実験だったそうです。

 

 

京都に希望をもたらした、日本ではじめての有人軽気球

お次は、創業のストーリーを学べるコーナーへ。

「仏具職人から理化学器械の製作へ」という言葉にあるように
〈島津製作所〉の創業者、島津源蔵は「元・仏具職人」だったのです。

 

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明治初期、木屋町二条は
京都府が欧米の最新技術を導入した実験所や工場など
多くの産業諸施設を設立した、近代科学発祥の地でもありました。

仏具職人の家に生まれた島津源蔵は、
その中心的な研究機関である「舎密局(せいみきょく)」に入り浸り
知識を会得、これまでに培ってきた仏具製作の技術と掛けあわせて、
教育用理化機器の製作をスタートさせます。これが〈島津製作所〉のはじまりです。

 

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島津源蔵の名がひろく知れ渡ったのは、明治10年(1877年)のこと。

「科学技術発展 の具体例を示し、人々の感心を高めたい」と京都府からオーダーを受け、
試行錯誤を経つつも わずか数ヶ月で軽気球を製作、
日本ではじめて有人での飛揚に成功しました。

そのとき源蔵が持っていた資料は、
海外雑誌に載っていた挿絵のみ(!)だったそうです。

 

 

新しいモノを創りだす情熱と

世界に目を向け、すぐれたものを取り入れる姿勢は
その後もとどまることを知らず、

 

 

初代源蔵は創業後7年後で、 110点もの理化器械製品を掲載したカタログ「理化器械目録表」を製作。

その末尾には、「御好次第何品ニテモ製造仕候也」=「お好み次第で何品でもつくります」という言葉が刻まれています。職人魂を感じます。

 

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初代源蔵亡きあと、26歳の若さで跡を継いだ2代目・源蔵もこれまたすごい人で、
15歳のときに1枚の挿絵から、新型の起電機をつくりあげたことにはじまり

電池の原型である蓄電池、日本ではじめての医療用レントゲンなど、生涯で得た特許は178件にわたり、「日本のエジソン」と呼ばれています。

 

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(こちらが15歳のときにつくった、ウィムシャースト感応起電機)

自動車のバッテリーとして国内最大のシェアを誇る「GSバッテリー」の原型も、2代目島津源蔵がつくったものなのです。 GSとは「Genzou  Simadzu」のイニシャルだったことをここで初めて知りました!

 

 

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自分が個人的に最も興奮したのが
発明品や理化学器械の数々が展示されているコーナーです。

明治・大正時代の理化学器械は、
富裕層向けに装飾やデザインにもこだわる西洋の流れを受け継いでいるそうでして、

初代源蔵はそこへさらに「無機質な器械ではなく、子供たちに科学の楽しさを感じてほしい」との想いから色使いやデザインに一層の工夫を凝らします。

 

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なんの器械かはわからずとも、とにかく眺めているだけでワクワクします。

実用のみならず、装飾やデザインにこだわることはまさしく「仏具製作」のフィールド。源蔵の職人技は、これらの器械の細部にも活かされています。

 

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なかなか普段目にすることのない明治・大正期の理化学器械。
デザインやものづくりを志す方・携わる方には
インスピレーションの元にもなりそうです。

 

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日本ではじめて、マネキンを生産したのもここ〈島津製作所〉。その製作技術の基になったのは、「人体模型」だったということにも驚きました。

 

 

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戦前から戦後に入ると、産業機械の開発が多く見られます。島津源蔵親子の発明スピリットはその後も〈島津製作所〉の人々へ受け継がれ、さまざまな「日本初・世界初」を実現。

2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんも、〈島津製作所〉の社員です。

 

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同じ部屋には、当時の発明品を
実際に触れて動かして楽しめるコーナーがあります。
2代目源蔵さんが15歳でつくり、その後のX線撮影装置の開発にも活かされた「ウィムシャーストの感応起電機」も、ここで実際に回してみることができます。

 

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手前の取手をまわすと

 

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バチバチっと電気が発生。
実際に動かしてみると、あらためて
この装置を15歳でつくりあげた2代目源蔵さんのすごさを実感しました。

 

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こちらは3Dメガネの原型のようなもの。覗いてみると、写真が立体にみえます。

島津記念館 from beacon kyoto on Vimeo.

映画の原型ともいわれている、まわすと絵が動くようにみえる道具。「映像」というものが一般的になった現代を生きる自分ですら「おおお!」と歓声を上げたくなったので、当時これをはじめて見た人々の興奮は計り知れません。

 

 

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(源蔵親子が暮らした住居スペース)

創業や発明のストーリーを時代ごとに追い、ひととおり館内をみてまわると、
すべてのルーツが「仏具職人」にあったことのすごさがあらためて身にしみつつ、この企業が京都で生まれたことの必然性を感じました。

「技」を活かすこと、世の中をよりよくすること、作り手の熱量が、ひとつずつの「モノ」から伝わってくる〈創業資料記念館〉。

京都のあたらしい一面を知ることができる、稀有な施設です。
観光の合間にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

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〈島津製作所  創業記念資料館〉

住所:京都市中京区木屋町二条南(地図
電話:075-255-0980
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:水曜日

入館料:

大人     300円
中高生   200円
小学生以下無料
団体(20名以上は2割引)<要予約・案内可>

WEBサイト:http://www.shimadzu.co.jp/visionary/memorial-hall/

 

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