樋口農園

伝統野菜の種を未来へとつないでゆく、老舗農家の使命。〈樋口農園〉

丘陵地帯である鷹峯は水はけが良いため、野菜作りに適しているのだという。粒子の細かい粘土質の赤土も、肥料の吸収を助けてくれる。そんな土地で、〈樋口農園〉は400年前から代々農業を営んできた。

06-IMG_0085 農園前の販売所

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年間を通して栽培している野菜は30〜40種類ほど。そのなかには、賀茂茄子や九条ネギといった京野菜も含まれている。購入者の半分は、料亭やレストラン。〈樋口農園〉の野菜に惚れ込み、毎日のように自ら収穫にくる料理人も少なくない。

取材を行った8月中旬は、鷹峯とうがらしのシーズンだった。いつからこの地域で作られているのかはっきりとしたことは分かっていないが、農場主である樋口氏のおばあさんの代には既に栽培していたのだという。あと10年程で、京野菜に認定されている品種と同じく100年以上の栽培歴になる。

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緑色のものと、鮮やかな赤色に熟したものを生のまま試食させてもらった。

緑の方はシャキシャキとしてアクが少ない。強火の遠火でまるごと焼き、鰹節と醤油をかけても美味しいそうだ。

赤くなっているものは、フルーティで甘みが強い。木に負担がかかるのでほとんどは熟さないうちに収穫するため、数は少ないそうだが、驚くほどジューシーで美味だった。ムースにするシェフもいるとのこと。

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「どれだけ経験を重ねても、天候には勝てない。自分の力ではどうすることもできないことがあるなかで、野菜の様子を見たり、明日の天気に備えたりというリカバリを続けていくんです。それでも、台風で全部駄目になってしまうこともある。何回農家を辞めようと思ったことか」と、樋口氏は語る。

それでも続けていくのは、昔からずっと続いてきたものを自分の代で絶やす訳にはいかないという自負があるからだという。鷹峯とうがらしをはじめ、今伝わっている伝統野菜の種は、樋口氏のお父さんが苦労して採取してきたものだ。

「技術は、しばらく辞めたとしてもまた再開できます。でも、種は一度でも途絶えてしまったらもうおしまい。交雑してしまってもアウトなんですよ」。

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〈樋口農園〉の野菜は、地下鉄北大路駅のすぐ近くにある野菜の直売所「時待ち食」でも購入できる。農園と同じく、店頭に並ぶのは旬のものだけだ。

「生産者と会話しながら野菜を購入すると、季節感や旬のものを食べる大切さが分かると思います。生産者にとってもお客さんから直接感想をお聞きするのは励みになるんですよ」。

先人たちの知恵と努力で現代に受け継がれている結晶を、ぜひ一度味わってもらいたい。

 

〈樋口農園〉

住所:京都市北区鷹峯土天井町5(地図

電話:075-492-7950

営業時間:9:00〜17:00(定休日なし)

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