喫茶 ニュー雲仙

どこにでもあるようで、ここにしかない純喫茶。

―文・写真 / 馬場健太

 

日本の喫茶店には「パリ」や「ロンドン」「ニューヨーク」「ブラジル」などと海外の国や都市の名前がついていることがある。
そのほとんどはおそらく店主の方がそれらの土地にゆかりがある、というよりも「まだ訪れたことはないけれど良いイメージがある」とか実際に足を運んで、ものすごく惚れ込んだとか、大雑把に言えば「単純に好き」だから店名にそれらの土地の名前をつけているのだと思う。  


27-IMG_1648_1 伏見・中書島をはじめて歩いて〈喫茶ニュー雲仙〉の看板を目にしたとき 「雲仙って、あの長崎の雲仙かぁ」と自分が長崎の生まれであることから勝手に親近感を抱いていた。

 

33-IMG_1657_1 見知らぬ土地で古びた喫茶店に入るのはなんだか勇気がいるけれど 一歩踏み出した途端に、まるでそこが家の近所の「いつものお店」であるかのように落ちつく。〈喫茶ニュー雲仙〉もそんな場所だった。  

 

25-IMG_1644_1 気になっていた店名の由来は 「この喫茶店を立ち上げた先代の 好きな場所が「雲仙」だった」 それだけなのだそうだ。 長崎の出身であるわけではなく単純に「好き」だったから。店名に「パリ」とか「ロンドン」と つけることと近いような 好きな土地の名前を、 お店の名前にするという自由さ。ネーミングの自由さは、その時代を象徴しているようにも思う。

 

04-IMG_1601_126-IMG_1646_1 22-IMG_1639_107-IMG_1605_1 〈喫茶ニュー雲仙〉の創業は1935年。 創業当時の店名は「ミルクホール 雲仙」だった。
※ミルクホール:明治時代に多く登場した、軽食・ミルク・コーヒーなどを提供する飲食店。喫茶店の前身。  

そこからお店の名を「喫茶 雲仙荘」「喫茶ニュー雲仙」へ、時代にあわせて営業スタイルも少しづつ変え、今に至る。  昭和の最盛期には ジュークボックスで一日中、賑やかな音楽が流れ店内はお客さんでごった返していたそうだ。スナックやバーが軒を連ね、「夜の街」として栄えていた中書島。洋酒喫茶として主にアルコールを出していたときは、それはもう大賑わい。インベーダーゲームが数台、店内に置かれていた時代もある。  

 

34-IMG_1661_137-IMG_1664_1 (昭和期の頃のメニュー)   20-IMG_1634_1 今、お店を切り盛りしているのは2代目のご夫妻。20歳前後からお店に立ち始めたおふたりも還暦を迎えている。 変わったのは、メニューの内容とおふたりが歳を重ねたこと、通りの人通りが少なくなったこと。 お店の中は、ほとんど変わらない。

 

  10-IMG_1609_1 洋酒喫茶時代の名残を残す、立派なカウンター。 ここに身体を預けてコーヒーをすすると、 言い知れぬ落ち着きを感じる。  

12-IMG_1612_1 (奥には、ミーティングなどに使える多人数用のテーブルがある)  

 

 

16-IMG_1618_117-IMG_1623_1ネルドリップで淹れたコーヒー。  

 

09-IMG_1607_1 こちらが現在のメニュー。  

 

29-IMG_1650_1 喫茶店には欠かせないモーニングや、本格的な食事メニューもある。  

 

23-IMG_1641_1 06-IMG_1603_1 旅行中は、「旅先でしか体験できないこと」に加えて「いつもの」空間や味、安心感を求めたくなるときがある。 そんなときはだいたい、日本中、世界中どこにでもあるチェーンのファストフードショップやカフェに入る。ただ、その町にしかない歴史が刻まれた純喫茶に入り不思議な安堵感とノスタルジック浸るのも「特別な経験のひとつ」なのだと、〈喫茶ニュー雲仙〉に足を運んでみて、あらためてそう思った。

 

 

    30-IMG_1652_1 〈喫茶ニュー雲仙〉 住所: 京都府京都市伏見区南新地4-90(地図) 営業時間:AM8:00〜PM10:00 定休日:日曜日(不定休あり)

 

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