-another Kioto-
似て非なるもの、龍とドラゴン
京都市在住、スペイン語通訳案内士のpukuが スペイン語圏の海外ゲストの方々とみつめる 「別視点の京都」をご案内します。
《004》似て非なるもの、龍とドラゴン
私の好きなお寺の一つが、東福寺です。定番の散歩コースになっています。
境内に入って最初に向かうのは三門で、その堂々とした美しさを眺めてから、いつも本堂に向かいます。本堂に着くとまず手を合わせ、そして天井を覗き込みます。そこには私のお気に入りの龍の天井画があり、何を考えるでもなく龍の目をじっと見つめる時間が大好きです。
日本人なら大抵、『龍』と聞けば瀧を登る龍や雲間を駆ける龍を想像するかと思います。水や雨を連想させる龍は、木造建築の日本の建物を火災から守ってくれるという意味と、仏法を守護する龍から、お寺には多く描かれています。
一方、西洋のドラゴンは火を吐く悪のイメージ。
龍を直訳すればDragonとなるので、スペイン語でガイドをする際はこの単語を使うのですが、日本(おそらく仏教圏全体でしょうか)の龍と西洋のドラゴンは似て非なるもの。
そのため、欧米からお越しのお客様は、木造建築に龍が描かれているのを最初に見た時、少し不思議に思うようです。
「火事による焼失が多い日本の建築物に、火をイメージするドラゴン…??」
京都には、龍の絵があるお寺が多くあります。天龍寺、建仁寺、妙心寺などなど。有名どころ以外にも、龍の彫刻が美しい寺社もあるので、お気に入りの一つを探してみるのも楽しいと思いますよ。
ちなみに東福寺の龍の天井画は、昭和の初めに堂本印象によって描かれたもの。京都の歴史からすると新しいものですが、素敵な龍の天井画です。本堂に入れる日は限られていますが、外から覗き込むだけなら、いつでも見られますよ。
〈PROFILE〉
puku
メキシコでの2年半の通訳業務を経て、2015年春より再び京都での暮らしをスタート。現在は京都市在住。フリーランスのスペイン語通訳・翻訳・通訳案内士として日々京都を訪れる、スペイン語圏の旅行客の通訳・ガイドを行う。これまでに南極大陸を除く全大陸に足を踏み入れており、訪問国数は約30か国。国内旅行も好きで、これまで"旅先"として44都道府県を訪れる。