DYEING FACTORY「馬場染工場」

テナセン。それは布を染める魔法のことば。

文:林宏樹 写真:瀧本加奈子

包むものの大きさや形に関わらず、変幻自在にモノを包むことができる風呂敷。1枚の布というシンプルさは使って見ると実に便利で、筆者もここ10年来、旅に出るときは衣類をまとめるのに使っている。
最近では色や柄も豊富に出回り、カジュアルな洋服にカバン代わりの風呂敷を合わせて楽しんでいる女性を街で見かけることも多くなってきた。風呂敷ユーザーとしては非常に嬉しい傾向だ。

その風呂敷を染める現場を見学できるというので、大正2年(1913)創業の馬場染工場にお邪魔した。一見、染工場とは分からない瓦屋根の載る木造の工場では、手捺染(てなせん)という呪文のようなことばの技法で、風呂敷の生地が染められている。
板場と呼ばれる工場内に入ると、傾斜をつけた台が6列、建物の奥までずっと続いている。この台に白生地を貼り、染めたい部分だけインクが通るように加工されたスクリーンの型を使って模様を染めていく。

職人さんの作業は、テンポがよくとてもリズミカルだ。定位置に型枠を置き、スキージと呼ばれる掻きベラを使い、色糊を下から上へ、そして上から下へ一往復。1ヶ所が終われば、型枠の幅だけ型枠を右側にずらし、同じ作業が繰り返されていく。

一度に染められるのは1色のみ。色数が多ければ多いほど手間は掛かるが、見ている分にはとても楽しい。1色染まるごとに、完成図を予想しながら見るのはワクワクする。最後に背景色を染め、パッと柄が浮かび上がって見える瞬間は、まるで手品を見ているようだ。

「一見簡単そうに見えますが、染めムラや染め残しを作らないよう力加減を一定にして一気に染め上げるには、技術が必要です」と話すのは、馬場染工場4代目の馬場憲生さん。染める色を調合する「色合わせ」では、同じ色が再現できるように色ブレは厳禁。なるべく少ない色の調合で様々な色を生み出していく。また、傾斜した台に生地を貼る「地貼り」では、生地の目が歪まないよう細心の注意が払われる。何気なく進むひとつひとつの工程にも、永年の経験が育んだワザが活かされているのだ。

馬場染工場では、永年京友禅の老舗「千總」の風呂敷を染めてきた。その確かなワザと完成品のクオリティは誰もが認めるところ。その馬場染工場が、10年ほど前から取り組み始めたのが、オリジナルブランドの「mashu」だ。
シンプルにアレンジした伝統柄をはじめ、動物柄など新たなデザインも加えて20数種類の楽しい柄がラインアップしている。自分で使うのもいいが、プレゼントにも喜ばれそうだ。「使用する色数を抑えたり、昔ながらのちりめん生地のほかに綿素材の商品も加えることで価格を抑え、気軽に普段使いしてもらえる工夫をしています」と馬場さん。
馬場染工場のサイトから購入できるほか、烏丸三条の「千總」が展開するショップ「SOHYA TAS」では、実物を手にとってみることもできる。

大量生産には向かない手捺染だが利点もある。「風呂敷はじめ、浴衣、手ぬぐい、服地など、何にでも対応できて、生地も選びません。あと小ロットのオーダーにも対応できるのが強みです」と馬場さん。馬場染工場では、個人からの「引き出物用に風呂敷50枚」というような小ロットのオーダーも相談に乗ってくださるとのこと。オリジナルの風呂敷なんて、ちょっとカッコイイではないか。

馬場さんは「伝統工芸という敷居の高いモノではなく、なるべく多くのお客さんに使ってもらえる商品を作り続けていたい」と話す。それはオリジナルブランド「mashu」の精神。今も現役で板場に立つ先代の善久さんと憲生さんが、二人が並んで仕上がりをチェックしている姿を見ていると、この空間で生み出された風呂敷が欲しくなってきた。

 

馬場染工場〉住所:京都市伏見区深草向川原町29(地図) 電話:075-641-0606定休日:日曜・祝日 *工場見学は事前に要連絡(見学時間は10:00–16:00の間で相談)

mashu

 

★BEACON KYOTOでは、ご紹介した伝統産業事業者の方々とのチームを組み、「今までにない“京もの”づくり」を実現する新しい商品ブランド『京都KOTO-HAJIME』を立ち上げ、その商品を販売するECサイト『BEACON EC』をスタートしました。 

そして「京都KOTO-HAJIME」プロジェクトにより開発された第一弾商品は『ウルトラマン×京都伝統産業』。放映50周年を迎えた国民的ヒーローと京都のコラボレーションです。

友禅商品

本記事でご紹介している馬場染工場さんにも協力をいただき、ブックカバー、風呂敷、手ぬぐい(上記写真左から)を開発しました。現在、BEACON ECで絶賛発売中です。ぜひ下のバナーをクリックしてBEACON ECをご覧ください。

 

★この記事は、京都を「A」から「Z」で考えるWEBマガジン『BEACON MAGAZINE VOL.2 ~CRAFTS of KYOTO』に掲載されています。ぜひこちらから他の記事もご覧ください。
『BEACON MAGAZINE VOL.3 ~AQUA in KYOTO』
→→『BEACON MAGAZINE VOL.1 ~宇治・伏見のA to Z』

 

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