ICE「二條若狭屋 寺町店」

おいしいかき氷とは?

文:中村慶子、写真:瀧本加奈子

蒸し暑い京都の盛夏は、「おいしいかき氷でも食べて涼みたい」という気分にたびたび襲われる。おいしいかき氷とは何か。多くの人が思うのは、トッピングやシロップのことだろう。しかし、かき氷の成分は大半が水。だから、良質な水でできた氷をおいしいかき氷の条件に挙げる人がもっといてもいい。氷がおいしいからこそ、シロップやトッピングの味が生きるのだ。「彩雲」というかき氷に出合い、そんなことを考えた。

1917(大正6)年の創業からまもなく100年を迎える京菓子の二條若狭屋。「彩雲(さいうん)」(1,512円)は寺町店の2階茶房でいただける。店長を務めるのが、4代目社長を兄に持つ大石真由美(おおいしまゆみ)さん。市内の甘味処を日々お昼休みに自転車で巡りながらメニューを考案するなど、研究熱心で大の甘味好きな大石さん、3年前に茶房を開設するにあたり、店長に抜擢された。そんな大石さんが「甘味処といえばやっぱりこれがおいしくないと」とこだわったのがかき氷。「ほうじ茶氷」「宇治金時」など数ある種類の中でも、新鮮フルーツを使った5種のシロップが楽しめる「彩雲」は特にオリジナリティにあふれる。

注文後口にしたお水のまろやかな味にまず驚き、かき氷への期待が高まる。お冷のおいしさに感動するお客さんも多いそうだ。

しばらくすると、奥の厨房からゴロゴロという音が聞こえてきた。様子を見せていただくと、昔ながらの手動氷削機で氷が手がきされている。「水は地下30㍍からくみ上げています。京都三名水のひとつに数えられる梨木神社の『染井の水』に近いので、軟らかくておいしいと言われますね」。開店当初は氷屋さんから購入していたが、せっかく水がおいしいから、自前で作ろうかという話になった。「マイナス4~7度で、3日かけてゆっくり凍らせるのが特徴です」。家庭用冷凍庫の温度設定がマイナス18度ほどだから、比べるとかなり高め。氷をかきながらポトポトと水がしたたっている。

山のようにこんもり盛られた氷を、まずはそのままいただいてみた。かき氷を口にすると冷たさに頭がキーンと痛くなることがよくあるが、じんわり凍らせた氷だからそれがない。ふんわり柔らかく、繊細な口当たり。味に雑味がなくピュアなことも分かる。
続いて、自家製シロップ5種をかけながら賞味する。甘酸っぱい「清美オレンジ」「キウイフルーツ」「リンゴ」に、こっくり味の「べっ甲飴」「黒糖ミルク」。素材の味わいを生かすため、丁寧に濃縮させたコンポート状のシロップだ。氷が冷たすぎないから、優しい味わいがちゃんと伝わってくる。蜜のラインナップは日によっても季節によってもいろいろだが、愛媛に親戚筋がおられる関係で、新鮮な旬の果物を使ったシロップが常に3種並ぶ。色とりどりのシロップに加え、食べ進めるとふわふわ氷の中から小さなカットフルーツが現れるのも目に楽しい。とはいえ最も感心したのは、シロップもカットフルーツも出しゃばらず脇役に徹しているところ。氷のおいしさを邪魔せず、主役の味をさらに高めようという意気が感じられるのだ。「おいしい水の恵みを最大限に生かすかき氷にしたかったんです」。効果的ながら出過ぎない演出には、「グッジョブ」と拍手を贈りたい気分にさえなる。最後まではんなりと優しい味のかき氷は、とても京都らしいと感じた。そうそうこれは、同じく京都の地下水を使った食材や京料理をいただいたときに感じる気分。水は食の原点なのだ。

夏は行列必至という人気のかき氷。しかし、通年メニューのかき氷を、ファンは冬こそ食べに訪れるという。食感が冷たすぎないし、溶けにくいため慌てず食べられるから。暑気払いではなく、氷がおいしいからという理由で。


二條若狭屋 寺町店> 
住所:京都市中京区寺町通二条下ル榎木町67(地図)
電話:075-256-2280
営業時間:9:00~18:00(茶房は10:00~17:00)
定休日:水曜

 

★この記事は、京都を「A」から「Z」で考えるWEBマガジン『BEACON MAGAZINE VOL.3 ~AQUA in KYOTO』に掲載されています。ぜひこちらから他の記事もご覧ください。
『BEACON MAGAZINE VOL.2 ~CRAFTS of KYOTO』
→→『BEACON MAGAZINE VOL.1 ~宇治・伏見のA to Z』

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