SPLASH「京都の滝」

舞う飛沫、響く水音

文:田中京子
写真提供:中西謙一

崖の上から絶え間なく落ちる清冽な水の流れ。滝壺からは冷たい飛沫が風とともに舞い上がる。すがすがしくも厳しい水の流れが雑念を払い清めてくれるような気がする。「山紫水明の地」と呼ばれ、豊富な水の恩恵に浴する京都。でも意外と、京都の滝といわれてもあまりイメージが湧かない人が多いと思う。京都の滝はどんな姿を見せてくれるだろうか。

そんな疑問を持ちつつも新しい京都の顔が見られるのかと期待に胸を膨らませ、最初に訪れたのは、京都市の清滝にある「空也の滝」。京都バス「清滝」から約5キロメートル。愛宕山の山麓にあるため、脚に自信がある人なら、山歩きと組み合わせてもよい。

軽登山靴をはいて、月輪寺(つきのわでら)登り口を、左に曲がる。「空也瀧(くうやのたき)」とある標識を目に、うっそうとした森の石段をあがった。そばの川の水の流れは速い。澄んだ水がしぶきとなって飛び散る。緑色のビロードのようなコケに覆われた岩が、ゴロゴロと転がっていた。

空也の滝は、平安時代の僧、空也上人が修行をした場所といわれる。「滝はまだ?」と思いながら、登ること10数分。鳥居の向こう側から滝の水音が聞こえる。ようやく会えた空也の滝は、高さ12メートル。前日に雨が降ったせいか、豊富な水が流れ落ちていた。ざあーっと力強い音がする。よく晴れた日だったが、とても涼しい。白いふんどしを締めた男性が1人、滝にうたれて一心に念仏を唱えていた。今も修行に訪れる人がいるのだ。それは神秘的な光景だった。

<空也の滝>

京都市右京区嵯峨清滝(地図

迫力にあふれた空也の滝よりさらに大きな滝が京都府京丹波町須知にあると聞いて訪ねた。その名も「琴滝」。
琴滝へは京都縦貫自動車道を通って、京都市内から1時間半ほど。駐車場に車を止め、青モミジが美しい遊歩道を歩く。登山靴をはいていなくても、スカートでも大丈夫な歩きやすい道だ。遊歩道の脇に川が流れている。この先に滝があるのだなと、その姿を想像しながら歩き続ける。水音が近づき、数分で滝に到着した。

青モミジの向こう側の崖に、水が白い線となって落ちている。落差はなんと43メートル。府内で最大級の滝だ。少し離れた所から見ると、大きさがよくわかる。滑らかな一枚岩の崖を、筋となって流れ落ちる様子が琴の弦のようだということから「琴滝」という名がついた。滝壺の手前には不動明王(ふどうみょうおう)のほこらがある。空也の滝は水音にも修行の地ならではの厳しさを感じたが、琴滝の水音はこれだけ大きな滝なのに優しげだ。近づいて見上げてみると、細かい水飛沫とともに冷気が伝わってくる。滝の上流はどうなっているのだろう。つま先立ちになっても見えるはずもなく、むしろ好奇心をそそられる。漂う水飛沫に包まれて、すっきり晴れやかな気持ちで帰路につくことができた。

<琴滝>
京都府船井郡京丹波町須知(地図

少し足を伸ばせば広がる水のパワースポット・滝の世界。その雄大さ、迫力、神秘に心洗われることは間違いない。聖なる力を秘めた身近な水の存在にひたってみよう。

 

★この記事は、京都を「A」から「Z」で考えるWEBマガジン『BEACON MAGAZINE VOL.3 ~AQUA in KYOTO』に掲載されています。ぜひこちらから他の記事もご覧ください。
『BEACON MAGAZINE VOL.2 ~CRAFTS of KYOTO』
→→『BEACON MAGAZINE VOL.1 ~宇治・伏見のA to Z』

 

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